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ドームテントでグランピング場の魅力を最大化!【前編】

  • 草太 八木
  • 8月5日
  • 読了時間: 10分

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 近年、グランピング施設でドームテントを採用するケースが増えています。  ただ立てるだけではなく、施設全体の魅力づくりにドームテントをどのように「有効に活用」するかが、集客力やリピート力を左右します。

 本稿では、ドームテントを軸に、非日常体験の創出、運営効率の向上、地域との連携といった面から、継続的に選ばれる施設づくりを目指すヒントを詳しく解説します。

 今回は長くなりそうなので、前編と後編、2回に分けて投稿いたします。


1.ドームテントを“施設の顔”に育てる演出

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 グランピング施設における「第一印象」は、そのまま集客力やSNSでの拡散力に直結します。そして、その象徴的存在となるのが、やはりドームテントです。  一般的な宿泊施設とは異なり、球体という異質なフォルムはそれだけで非日常感を演出し、宿泊前のワクワクを高める視覚的インパクトがあります。


 しかし、ただ「珍しい形をしている」だけでは、施設の“顔”にはなりません。  重要なのは、そのインパクトを“物語”や“世界観”として膨らませ、記憶に残る体験へと昇華させる演出設計です。


 たとえば、夜の時間帯にドームテントを彩るライトアップは、極めて効果的な要素です。 外壁の膜越しに内照式のライトを当てるだけで、自然の中に浮かび上がってテントは幻想的になります。  LEDや間接照明、カラーライトを組み合わせることで、四季や時間帯、イベントに合わせた演出も可能です。  春には桜のライトアップ、夏は星空観察との連動演出、秋は落ち葉の遊歩道や焚き火と組み合わせた温かみのある照明、冬は雪景色に映える白と青の光演出など、自然と一体になった演出を季節に応じて刷新していくと、宿泊体験に新鮮さが保たれます。

 これにより、宿泊者がチェックイン直後に感じる高揚感は格段に上がります。


 もう一つ見逃せないのが「滞在者による発信」です。  SNSでのシェアを促すなら、宿泊者が思わず撮影したくなるようなシーンを設計することが鍵となります。  外観の美しさに加えて、ドームの前にフォトスポットとしてのベンチや装飾オブジェ、オリジナルロゴをあしらった木札や照明などを配置することで、投稿時の“タグづけ”や“施設名の想起”を促すことが可能です。


 これらの演出を支えるうえで重要なのは、「全体の世界観に統一感を持たせる」という発想です。  単に装飾するのではなく、施設として伝えたい価値観やブランドイメージに合わせて、自然派・アート派・ラグジュアリー派・異世界風などコンセプトを一貫させることで、単なる宿泊から“没入体験”へと昇華させることができるのです。


 結果として、ドームテントは単なる宿泊設備を超えて、「ここに来なければ味わえない世界観」の核となる存在に育ちます。  その演出が成功すれば、施設全体の価値も向上し、口コミ・SNS・リピーターといった自然な集客動線が生まれやすくなるのです。



2. 宿泊動線の設計で“滞在価値”を高める

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 グランピング施設において、宿泊者の「満足度」や「記憶に残る体験」を生み出すうえで、意外と軽視されがちなのが“動線設計”です。  しかし、実はこの「動線」こそが滞在者の五感に働きかける重要な要素であり、場の世界観や印象を形成する裏方のような存在です。


 ドームテントという非日常的な宿泊ユニットを活かすためには、テントそのものだけでなく、「テントに至るまでの道のり」や「テントから見える風景」も含めて、ストーリーの一部として設計すべきです。


 たとえば、駐車場からドームテントまでのアプローチが「ただの砂利道」であるのか、「林間の小径を通る木漏れ日のアプローチ」であるのかで、宿泊者が最初に感じる“期待感”は大きく異なります。  照明の配置や足元の素材(ウッドチップ、板張り、自然石など)も含めて、「ワクワクする道のり」を演出することで、テントに到着する前からその体験価値は始まっているのです。


 また、チェックイン後の動線、つまり「滞在中にどこで何を体験するか」の導線にも配慮が必要です。  たとえばドームテントと食事スペースの位置関係、トイレ・シャワー棟までの距離と照明、焚火スペースや星空観察エリアへの動線など、すべてが「安心感」や「快適さ」に直結します。  動線が分かりやすく、かつ安全で美しく設計されていれば、自然の中という環境でも「落ち着いて過ごせる空間」が確保され、結果として高い満足度につながります。


 動線設計には“視線の誘導”も含まれます。  人間は歩いているときに自然と視線が誘導される方向に関心を抱くため、視線の先にシンボルツリーや灯り、ベンチ、オブジェなどを配置することで「立ち止まりたくなる」「写真を撮りたくなる」動きが生まれます。  このように動線上に「物語の節目」をつくることで、滞在者の記憶に残る体験が自然に形成されていきます。


 細かいところではありますが、ドームテント内のレイアウトにもこだわりましょう。

 おしゃれであることももちろん重要ですが、利便性を意識したレイアウトも同じくらい大事です。  入り口からベッド、窓辺、空調設備、小物スペース、荷物置き場などがストレスなく移動・使用できる構成になっているかによって、宿泊中の快適度が上下するでしょう。

 ドームという形状上、壁が曲線であることから、ベッドや家具の配置に工夫が必要です。   動線を邪魔しないコンパクトな造作家具や、視線を遮らないレイアウトができている施設は、それだけで「気が利いている」「居心地がよい」と感じられやすくなります。


 動線に物語性を持たせるという点では、チェックインからチェックアウトまでの流れ全体を通して、季節や時間帯ごとの演出があると印象が強まります。  夕方には焚火へ自然と誘導される光の道、夜は星空観察への静かな誘導、朝は鳥のさえずりや自然光の差し込みを活かした動線など、「一日の流れ」に寄り添う演出が、何気ない滞在を“特別な体験”に変えてくれるのです。


 こうした動線設計は「バリアフリー対応」や「小さなお子様連れのお客様への配慮」にもつながります。

 通路の幅や段差の有無、移動距離の短縮、安全柵の設置など、実用性を高めながら世界観を損なわない工夫が、施設全体の完成度を高めます。


 「ただ泊まる場所がある」だけでは終わらせず、ドームテントという非日常的な空間を起点に、そこへ至る“道のり”と“そこからの景色”を含めてトータルで設計してこそ、本当の意味での“グランピング体験”が完成するのです。



3. 景観と環境を味方につける

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 グランピング施設が都市型ホテルと決定的に異なるのは、「自然との共生」が前提となっている点です。  つまり、グランピングにおける滞在価値の根幹には、「その土地ならではの景観」が深く関わっています。  ドームテントという独特な宿泊ユニットは、その構造的・視覚的特性からも、周囲の自然環境と調和・共鳴しやすい設計となっており、それを最大限活かすことが施設の魅力を高める鍵となります。


 窓の位置と外の景色との関係性は非常に重要です。  一般的な建築物と異なり、ドームテントは多くの方向に開口部を設けることが可能です。  その自由度を活かし、山並み、海、湖、森、田園、夜景など、施設ごとの絶景ポイントに向けて窓や出入口を設計することで、まるで「景色を切り取る額縁」のような演出が可能になります。  朝焼けを望むために東向きに窓を設ける、あるいは夕焼けが美しい場所なら西向きに配置するなど、「時間と方角」を考慮した設計は、宿泊者に感動のワンシーンを届ける強力な手段です。


 「内からの景観」だけでなく「外からの景観」ももちろ重要です。  つまり、ドームテントが自然の中にどう“置かれているか”が、施設全体の美観や世界観を左右します。  たとえば芝生の上にぽつんと並べられているのか、それともウッドデッキや照明付きのアプローチで包まれているのか。あるいは森の中に点在するように隠されているのか。  ドームテントはその丸みを帯びた形状ゆえに、単なる建築物というよりも“オブジェ”のような存在感を放ちます。  だからこそ、「並べ方」や「配置のリズム」によって、全体の印象を大きく変えることができるのです。


 さらに、空間全体の演出としては、音・香り・温度といった感覚的要素も見逃せません。たとえば小川のせせらぎが聞こえる場所や、焚火の香りが漂う空間は、それだけで“滞在の質”を向上させます。  森林浴を意識したアロマ演出、虫除けと雰囲気づくりを兼ねたキャンドルライトなど、ドームの「内部」だけではなく、テント周囲の演出に気を配ることで、宿泊者はより深く自然とつながることができます。


 ドームテントは元来、外界との隔絶ではなく「自然とつながるためのシェルター」としての側面が強い構造です。  そのため、内部の快適性を保ちつつも、「外とどう繋がるか」という視点を持つことが、空間演出を成功させる鍵となります。言い換えれば、“景色を取り込む器”として設計・運用されるドームは、周囲の環境をどれだけ美しく活かせるかでその価値が決まるのです。


 「1」の項目にも書きましたが、「景観」という視点から見ても、SNSを意識する必要があります。があります。  この“景観”こそが、SNS上で最大の広告となるからです。  窓から望む絶景、ライトアップされた夜のドーム群、空と地面のコントラストなど、自然と融合した景観が「シェアしたくなる体験」となり、リピーター獲得や新規顧客の獲得に直結するのです。


 ドームテントはただ設置して泊まるものではなく、風景の一部となり、記憶に残る情景を演出するツールでもあります。  景観をどう切り取り、どう演出し、どう導くか。それによって、同じドームでも“何倍もの価値”が生まれるということを、設計段階から意識しておくべきでしょう。

 

まとめ ―ドームテントを有効活用するための第一歩

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 ドームテントは、その独特なフォルムや視覚的インパクトによって、グランピング施設に非日常感をもたらす優れたツールです。しかし、それは単なる「珍しい宿泊ユニット」ではありません。  ドームテントを本当の意味で“施設の顔”へと育てるためには、演出・動線・景観といった周辺要素を総合的にデザインすることが不可欠です。


 まず、施設の第一印象として、視覚的な美しさや世界観の統一感をもたせることが、「また訪れたい」と思わせる強い記憶に変わります。  ドームそのものの演出はもちろん、チェックインの瞬間からワクワク感を高めるアプローチの設計、フォトスポットになる外観構成、時間帯や季節に合わせた光や音の演出など、小さな工夫の積み重ねが、大きな“体験の価値”につながります。


 また、宿泊動線や施設内の導線設計は、単なる「利便性」の問題ではなく、感情や記憶に働きかける重要なファクターです。  動線の中に物語性やリズムを持たせ、自然と体験へ導く仕掛けを散りばめることで、滞在はより没入的なものになります。

 窓からの景色についても忘れてはなりません。

 景観をはじめ、周囲に漂う香りや音といった空間の要素すべてが、“その場所でしか味わえない情景”を生み出します。  その結果として、SNSでのシェアや口コミ、リピーターにつながる“感動の演出”が成立するのです。


 つまり、ドームテントの魅力を最大化する鍵は、「施設全体の設計思想」にあります。  宿泊という機能性だけにとどまらず、「ここに来ること自体が目的になる」ような世界観を中心に設計していくこと。その意識があれば、たとえ同じ形状・同じ素材のテントであっても、その価値は何倍にも引き上げられ、競合との差別化を図る決定的な要素となるでしょう。


 次回の後編では、ドームテントをどのように「運営」し、維持し、継続的に集客につなげるかという視点から、より実践的なアプローチを深掘りしていきます。今ある資源を最大限に活かす“仕掛けと仕組み”について、具体的に考えていきましょう。


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