業績悪化に悩むグランピング施設オーナー様へ。経営改善3つの処方箋
- 草太 八木
- 8月26日
- 読了時間: 7分
更新日:20 時間前

グランピング施設の業績が悪化し、頭を抱えていませんか?ブームの陰で競争が激化し、多くの施設が岐路に立たされている今、付け焼き刃の対策では未来は拓けません。
結論から申し上げます。 経営改善の鍵は「独自性の追求」「顧客体験価値の向上」「データに基づいた戦略」の3つです。
本記事では、国土交通省や自治体の公式情報を交えながら、グランピング経営の専門家集団である私たちNEXT GLAMPが、具体的な改善策を徹底解説します。
なぜあなたのグランピング施設は儲からないのか?ブームの裏に潜む3つの罠

華やかに見えるグランピング経営ですが、その裏では多くの施設が苦戦を強いられています。 その原因は、主に以下の3点に集約されます。
罠1:競合増加による価格競争の激化
グランピング市場は拡大傾向にあるものの、それに伴い新規参入が急増。結果として、近隣施設との間で価格競争が勃発し、利益率を圧迫しています。 単に設備が新しい、豪華というだけでは、もはや顧客を惹きつけることは困難です。
罠2:「豪華なだけ」では響かない顧客ニーズの変化
開設当初は目新しさで集客できたかもしれません。 しかし、消費者は単なる「豪華なキャンプ」以上の価値、すなわち「そこでしかできない体験」を求めるようになっています。 画一的なサービスでは、成熟した顧客の心をつかむことはできません。
罠3:オフシーズンの集客力不足
グランピングは気候に左右されやすく、特に冬季などのオフシーズンの稼働率低下は経営の大きな課題です。 年間を通じた収益安定化のためには、季節に依存しない魅力づくりが不可欠となります。
国も後押しする「体験価値」へのシフト。経営改善の羅針盤

こうした課題を乗り越えるヒントは、国の観光政策の中にあります。 現在、国土交通省観光庁は、地域社会や自然環境に配慮し、旅行者と地域の双方に良い影響をもたらす「持続可能な観光(サステナブルツーリズム)」を推進しています。
これは、単なる場所の提供ではなく、地域の文化や自然を活かした体験価値の提供を重視する考え方です。 グランピングは、まさにこの「持続可能な観光」を体現できるポテンシャルを秘めています。
また、観光庁の「旅行・観光消費動向調査」を基にした分析では、コロナ禍を経てキャンプ場の利用率が増加傾向にあることが示されており、自然志向の旅行への関心が高まっていることが伺えます。これは、グランピング施設にとって追い風となるデータです。
参考資料:国土交通省 観光庁「持続可能な観光地域づくりに向けた取組」
JTB総合研究所「コロナ禍で加速したキャンプブームは旅行市場を拡大させるか? [コラムvol.478]」
明日からできる!グランピング経営改善3つの具体的ステップ

国の大きな方針を踏まえ、具体的な経営改善策として以下の3つのステップを提案します。
ステップ1:コンセプトの再設計「地域資源」で独自性を生む
あなたの施設がある「地域」にこそ、最大の差別化要因が眠っています。
・地元の食材を活かした特別なBBQプラン
・近隣の農家と連携した収穫体験
・伝統工芸の職人を招いたワークショップ
・満点の星空を活かした天体観測ツアー
これらはほんの一例です。国土交通省も、地域一体となった観光地づくり(DMO)を推進しており、地域連携は強力な武器となります。施設のコンセプトを「地域との共生」という視点で見直し、唯一無二の魅力を創出しましょう。
参考資料:国土交通省 観光庁「観光地域づくり法人(DMO)とは」
ステップ2:顧客単価と満足度を同時に上げる「体験コンテンツ」の造成
宿泊料金だけで収益を上げようとすると、価格競争に巻き込まれます。収益の柱となるのは、宿泊以外の「体験コンテンツ」です。
サウナ、焚き火、ヨガ、アクティビティなど、ターゲット顧客が魅力を感じるであろうコンテンツを導入し、有料オプションとして提供します。 これにより顧客単価が向上するだけでなく、滞在中の満足度も飛躍的に高まります。
ステップ3:リピーターを育てる「デジタル活用」とファンマーケティング
新規顧客の獲得コストは、リピーター維持の数倍かかると言われています。 SNSでの積極的な情報発信や、宿泊者へのメルマガ配信、宿泊者限定の特典提供などを通じて、顧客との関係性を構築しましょう。
美しい写真や動画で施設の魅力を伝え、口コミを促す仕組みを作ることで、広告費をかけずに施設の認知度を高めることが可能です。
差別化の軸②:導線と体験価値の設計

「見た目」だけの施設は、“比較”で終わる
グランピング施設の多くが、美しい自然、おしゃれなテント、豪華な食事といった「外観の魅力」を前面に出します。
しかし、ユーザーが最終的に選ぶのは“スムーズで心地よい体験全体”です。
どんなに素晴らしい設備があっても、予約ページで迷わせたり、到着後に不安を感じさせてしまえば、リピートにはつながりません。
差別化とは、目に見える部分だけでなく、予約〜滞在〜帰宅後までの全体設計の完成度にこそ表れます。
■ わかりやすいプラン表示で迷わせない
予約ページが煩雑だったり、プランごとの違いが曖昧だったりすると、ユーザーは不安になり離脱します。
「AプランとBプランの違いは?」「夕食付き?なし?」「ペットはOK?」など、不明点が一つでもあると、他の施設へ流れてしまうのが今の消費行動です。
☑ 明確な比較表
☑ 写真付きの説明
☑ よくある質問の簡潔な表示
これらがあるだけで、予約率は大きく変わります。
■ SNSや公式サイトに“物語”を設ける
ただの紹介ではなく、ユーザーがその場にいる姿を想像できるかどうかが重要です。
公式サイトやSNSでは、体験者の1日を追体験できるようなストーリーデザインが有効です。
「チェックインは静かな森の中の小道から始まる」
「夕暮れ時には焚き火を囲んで地元ワインを一杯」
「朝は鳥のさえずりで目覚め、澄んだ空気の中でヨガ体験」
こうした情景が浮かぶ構成が、比較対象ではなく“行きたい場所”としての印象を強めます。
■ チェックイン直後に“来てよかった”と思わせる演出
・ウェルカムドリンクの提供(季節ごとに変化を持たせる)
・テントに入ると流れてくる静かな音楽とアロマ
・スタッフの一言「今日、星空きれいそうですよ」の演出力
こうした五感に訴える小さな驚きと気遣いが、強く印象に残ります。
■ 滞在中に“迷わない動線”をつくる
・施設マップが分かりやすい
・食事・アクティビティの時間が事前に明示されている
・トイレやシャワーの導線が直感的に理解できる
宿泊体験においてストレスの多くは「迷う・探す・確認する」ことです。
“迷わず行動できる仕組み”こそが、ラグジュアリーな体験の本質とも言えるでしょう。
■ 滞在後のフォローで「また来たい」を作る
宿泊が終わっても、施設としての体験設計はまだ終わりではありません。 チェックアウト後に残す“余韻と再訪の種”も重要です。
・SNSでの投稿を促すハッシュタグと撮影スポット
・チェックアウト後に届くお礼メール+写真の共有リンク
・次回限定のリピート特典や、季節イベントの先行案内
こうした帰宅後の接点が、「思い出」から「次回の計画」へと自然に繋がります。
魅力的な施設を作るだけでは、差別化は不十分です。
大切なのは、その魅力がユーザーにどう届き、どう記憶に残るかという体験価値の編集です。
予約導線、情報設計、滞在中の演出、退去後のフォロー。
これらを一つの“物語”としてつなげていく視点こそが、グランピング施設における真の差別化軸になります。
まとめ

差別化とは「見た目」ではなく、ユーザーが体験を通じて“違いを感じ取り、記憶に残す”ことです。 豪華なテントやインテリアは一瞬の印象を与えるかもしれませんが、再訪や推薦につながるのは「その場で何を感じたか」にかかっています。
とくに、誰に向けた施設なのかを明確にすることで、提供する体験の質が高まり、結果的に口コミやSNSでの拡散力も増します。また、予約から滞在、帰宅後に至るまでの流れを通じて「ストレスなく・心地よく・余韻が残る」ように設計されていることも重要です。
このように、“体験全体”を設計する視点こそが、今の時代に求められる差別化の本質です。
※ほかにも差別化の軸はありますが、それについては後編で詳しくご紹介します。
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