ドームテント導入で失敗しないためのチェックリスト10選【後編】
- 草太 八木
- 8月19日
- 読了時間: 8分
更新日:8月26日

グランピング施設へのドームテント導入は、そのユニークな外観と快適性から、多くの宿泊者にとって大きな魅力となります。 しかし、見た目のインパクトや話題性だけに注目して導入を進めてしまうと、「思っていたよりコストがかかった」「メンテナンスが手間」「お客様の反応がいまいち」といった“失敗”を招く恐れもあります。
これからドームテント導入を検討する施設様に向けて、失敗を未然に防ぐための10のチェック項目を、前編・後編に分けてご紹介します。
チェック⑦:法的な制限や許可は?

ドームテントを設置する際に、法的な視点を軽視すると、思わぬストップがかかることがあります。 行政ごとに細かく異なる部分も多いため、法令順守の確認は導入計画の初期段階から行う必要があります。
■ 都市計画法・用途地域の確認
まずは、設置予定地が「宿泊施設」や「レジャー施設」として認められている用途地域かを確認しましょう。
都市計画法に基づく「用途地域」によっては、そもそも宿泊施設の建設が認められない地域許可制でしか運用できないエリアも存在します。 とくに、農地や市街化調整区域は厳しい制限があり、農地転用や開発許可の申請が必要なケースが多いです。
■建築確認申請・構造に関する取り扱い
ドームテントは一般的な建築物とは異なるため、建築物として扱うか非建築物として扱うか、行政によって見解が異なります。
海外製ドームテントの場合、建築確認申請に対応していないため、非建築物として認めてもらう必要がありますが、準備不足で交渉に臨むと、明確な理由もなく建築物とみなされてしまう場合もあります。
専門家に同行してもらうか、専門家から資料の提供やアドバイスをもらった状態で交渉に臨みましょう。
■ 営業許可・保健所対応
宿泊施設を運営するには、旅館業法に基づく「簡易宿所営業許可」「旅館ホテル営業許可」が必要になります。
ドームテントは外観がテントでも「宿泊用途」と判断されれば旅館業の許可対象です。
また、飲食や調理スペースを設ける場合は、保健所からの飲食営業許可も必要です。
■ 法的確認は「専門家」とセットで
これらの法的チェックは非常に複雑で、一般の施主や事業者が単独で調査・解釈するのは難しいこともあります。
したがって、設計事務所・行政書士・建築士・自治体担当部署などと連携し、早期からの確認・相談が不可欠です。
ドームテントを“トラブルなく”設置・運用するためには、法的な側面のチェックこそ最重要事項の一つです。
夢のグランピング施設を現実にするためにも、見落としがちなこの項目を丁寧にクリアしていきましょう。
チェック⑧:運営スタッフの負荷は?

ドームテントは非日常空間を演出する魅力的な設備ですが、だからこそ「日常的な運営管理」が見落とされがちです。 設営後、施設が稼働し始めてから最も重要になるのは「スタッフにとって扱いやすい設備であるかどうか」です。
■ 清掃・整備のしやすさ
ドームテントはその構造上、内装が広く天井が高いため、掃除機がけや換気、湿気対策などに手間がかかる場合があります。 特に梅雨や冬季など湿度が高い時期は、結露やカビ対策が重要になります。
清掃動線や設備配置、床材の防汚性などを設計段階で考慮することで、スタッフの負担を軽減できます。
■ ベッドメイクや備品補充の効率化
宿泊系グランピング施設では、テント内のベッドメイクやアメニティ補充といったルーチン業務が発生します。 ドームテントのサイズや間取りが適切でないと、スタッフが動きづらくなったり、過度な負荷がかかったりすることがあります。
スタッフが複数人で作業できるだけの空間を確保する、収納や備品棚の位置を工夫するなどの「現場目線」が求められます。
■ トラブル対応の即応性
設備不良や汚損などのトラブルが発生した際、すぐに対応できる構造かどうかも重要です。 エアコンや照明の設置位置、電源系統のアクセスのしやすさ、外幕の交換に対応しているかどうかなども運営のスムーズさに直結します。
■ スタッフの心理的負荷も配慮を
オペレーションの難易度だけでなく、「やりがいを感じられる現場かどうか」「利用者の反応がスタッフに届く設計かどうか」も大切な要素です。おしゃれなテントや自然との融合といった要素があっても、現場スタッフが常に疲弊しているようでは、施設全体のクオリティは維持できません。
チェック⑨:集客施策とセットで考えているか?

ドームテントを導入する目的が「差別化」や「話題性の確保」にあるとしても、それをどのように顧客に届け、来場という行動につなげるかを明確に設計しておかないと、宝の持ち腐れになってしまいます。 ドームテントはあくまで“手段”であり、“目的”はあくまで「集客」「体験価値の提供」「収益の最大化」です。
■ ドームテント導入はプロモーションのチャンス
新たな設備導入は「話題作り」「広報タイミング」として絶好の機会です。 SNSやWebサイト、プレスリリース、チラシなどで「新しく○○ができました!」と告知すれば、潜在層への認知拡大にもつながります。 これを単なる設備更新として済ませるのではなく、戦略的に“集客イベント”として捉えることが重要です。
■ ドームテント×体験価値のセット設計
「映えるテント」だけでは飽和状態にあります。そこに独自の体験コンテンツ(例:星空観賞・焚き火・季節限定料理・サウナ・ペット可エリアなど)を組み合わせることで、来場の決め手となる“もう一押し”が生まれます。 ドームテントは“受け皿”であり、そこに何を乗せるかが集客成功の鍵です。
■ 予約導線までをセットで設計する
どれだけ魅力的なプロモーションを展開しても、予約のしづらい施設はユーザーに選ばれません。 自社サイトでの予約導線の明確化、InstagramやX(旧Twitter)からの遷移設計、口コミサイトへの最新情報反映、Googleマップからの動線など、「発見→理解→比較→予約」という一連の流れを意識することで、導入の効果を最大化できます。
■ 価格設定も集客戦略の一部
ドームテントは他の宿泊形態よりも高単価であることが多いため、価格戦略も重要です。キャンペーン価格や平日割引、連泊特典など、時期やターゲットに応じた料金施策も集客の大きな武器になります。
チェック⑩:差別化ポイントは何か?

ドームテントの導入が進む中で、“ただ置くだけ”では他施設との差別化が難しい時代に突入しています。 ユーザーは既に多くのドームテント施設を目にしており、比較対象が豊富に存在します。その中で選ばれるためには、「ここだけの体験」や「この施設らしさ」が明確に伝わる差別化が不可欠です。
■ 視覚的インパクトを最大化する装飾戦略
ドームテントは構造上、シンプルで均一な形状をしているため、外観や内装のカスタムが差別化のカギになります。特に有効なのが「ペイント装飾」。 施設のテーマや地域性に合わせたアートペイント、キャラクターとのコラボ、夜間ライトアップとの連動など、ビジュアルで記憶に残る演出が可能です。SNS映えも狙え、自然と拡散される仕掛けとなります。
■ 体験型コンテンツと組み合わせる
外観だけでなく、「その空間で何ができるか」も大きな差別化要素です。例えば、
・星空観察専用のドーム
・サウナ体験付きプラン
・プラネタリウムの映像投影
・キッズ向けのテーマルーム
・ペットと泊まれる専用ドーム
など、目的特化型のドームテント設計は、それ自体が広告となり、選ばれる理由になります。
■ 世界観とブランド設計
差別化とは、単に「珍しいことをやる」という話ではありません。 施設全体の世界観やブランディングと連動させたストーリー設計があってこそ、本当の意味で“らしさ”が宿ります。例えば、
・和の庭園に溶け込むドーム
・近未来的な宇宙船を模した内装
・演出照明によって時間帯で印象が変わるテント
・ストーリー性を持たせたチェックイン体験(冒険や謎解き要素)
など、「世界観に没入できる仕掛け」は、価格競争に巻き込まれない“価値”の提供にもつながります。
■ 利用者の声を活用する
差別化を強調するには、実際に訪れた人の声や体験をコンテンツ化することも重要です。
口コミ・レビュー・滞在レポート・動画・SNS投稿などを公式サイトや広告に活用すれば、“選ばれた理由”が第三者視点で伝わるようになります。
まとめ

ドームテントを用いた施設づくりでは、魅力的な見た目や快適な空間設計だけではなく、法的な整備や運営体制、そしてマーケティング視点からの設計までを包括的に検討することが成功の鍵となります。 たとえば、地域の条例や建築・消防・旅館業法などの法的制限をクリアできるかどうか、事前に確認・申請の体制を整えることは絶対に欠かせません。そして、導入後に現場を支える運営スタッフの負担が過大にならないよう、日常業務やメンテナンスのしやすさも見落とさずに設計する必要があります。
また、ドームテントは導入して終わりではありません。いかに集客と結びつけるかが、運営の成否を分けます。 SNSとの相性やPR施策を視野に入れた空間演出や導線設計はもちろん、集客キャンペーンやハッシュタグ活用なども含めて、訪れる前から発信・拡散の導線をつくっておくことが重要です。
さらに、他施設と同じようなコンセプト・同じ見た目では、数あるグランピング施設の中で埋もれてしまいます。 色や模様を用いたペイント装飾、独自のテーマ演出、コンセプト連動の体験プログラムなど、明確な“選ばれる理由”を設計することが、価格競争に巻き込まれずに予約を獲得し続けるための差別化ポイントとなります。
ドームテントの導入を単なる流行や雰囲気で終わらせず、継続的な価値を生む施設へと育てるために、こうした運営・法務・マーケティング・ブランディングの視点まで踏み込んだ設計を意識していきましょう。



コメント